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創業メンバーが語る、Qubena開発ストーリー【10周年インタビュー#01】

こんにちは。COMPASS10周年プロジェクトの豊島(リモコンPJTの記事に登場しています!)です。

私たちCOMPASSのはじまりは2012年。そう、今年2022年は創業10周年を迎えるCOMPASSにとって大きな節目の1年なのです!

これまでの10年間の歩みを振り返り、これから先の10年に向けて新たな一歩を踏み出す。そんな1年にするための社内プロジェクトの取り組みのひとつとして、このnoteでも10周年にまつわるインタビュー記事をお届けしていきます。

この記事を読んでくださる社外の皆さんにも、私たちCOMPASSについて知っていただくひとつのきっかけになると嬉しいです。

ということで前置きが長くなりましたが、そんな10周年インタビューの第一弾ゲストはCOMPASS創業時からのメンバーである鶴野さん&長谷川さん。Qubenaの誕生に教材開発メンバーとして携わられていたお二人に、開発観点でのお話を中心に伺っていきます。

今回のゲストのお二人!

鶴野聖(つるのたかし)/ 写真上
現在はコンテンツ開発部でQubenaのコンテンツ開発に携わる。個別指導塾で理系講師(主任)として勤めていた際にファウンダーに誘われ、2012年の創業時から学習塾COMPASSに参加。(過去登場記事

長谷川庄平
(はせがわしょうへい)/ 写真下
現在は事業企画部で外部提携などに携わる。大学生時代から学習塾講師として10年勤務。ファウンダーに誘われて八王子市の学習塾COMPASSへ。


Q.COMPASS参加のきっかけは?

――お二人はCOMPASSの原点「学習塾COMPASS」スタート時からの創業メンバーですが、参加のきっかけは?

 鶴野:
個別指導塾に勤務していた時に地元の幼馴染だったファウンダーの神野から「学習塾を設立したいんだけど」と声がかかり、今も会社のスローガンとしている「未来の君に会いに行く」に示されている彼が描いていた教育のビジョンに賛同し、参加を決めました。

長谷川:
僕は鶴野に遅れて創業1年後くらいからの参加なんですが、同じくファウンダーとは幼馴染で、声がかかったことがきっかけです。当時、別の学習塾の講師として働いていたんですが、経営側の営利が優先されて子どもたち一人ひとりに向き合い切れていないことに疑問を感じていて。ファウンダーから話を聞き、ここなら「子どもたち一人ひとりに向き合う教育」が実現できるのではと参加を決めました。

 ――皆さん幼馴染だったとは・・・!そしてお二人とも塾の講師をされていたんですね。

 鶴野:
そうそう。3人とも小学3年生から中学3年生まで同じ学校で家が近所で。

そうした縁もあって最初は神野、僕、もう一人のメンバーの3人で東京都の八王子市のカフェの2階を借りて小さな学習塾を開いたのがCOMPASSのスタートです。

 ――なぜ八王子だったんですか?

 鶴野:
「1つの中学校の生徒に特化した塾」
というのが一つ創業時のコンセプトにあって。この方針で塾を経営していくためには、生徒数が多い中学校じゃないといけない。

『生徒数が600人以上で、駅の周りに塾がほとんどない』こういう場所を東京中から探した結果、三鷹と八王子が候補に上がりました。どちらも物件を見に行くなどして、フィットしたのが八王子だったんです。

 ――なるほど、確かに、当時の資料を見ると「〇〇中学校専門塾COMPASS」となっています・・・!

鶴野:
そうそう、ちなみに、冬期講習のタイミングからのスタートになったので、COMPASSの創業日は12/25なんですよね。

学習塾COMPASS時代の鶴野さんの名刺

Q.「Qubena」開発のきっかけは?

 ――Qubenaの原型となる教材は紙だったとのことですが、開発のきっかけはなんですか?

 長谷川:
冒頭でも少し触れましたが、「未来の君に会いに行く」というスローガンは創業当初からあったものです。

 今後、シンギュラリティ(人間の脳とAIの能力の逆転)が起きて、産業構造が変わり、今の仕事がなくなって新しい仕事が生まれて・・・これを子どもたちに伝え、そんな未来を生き抜くための力を身に付けてもらいたい、ファウンダーの神野の想いがCOMPASS創業の原点で。

でも学校の宿題、塾、習い事、部活動などで、子どもたちはめちゃくちゃ忙しくて・・・。塾長として子どもや保護者との面談を主に担当していたファウンダーは、子どもたちに「未来のこと」を考える時間がないことを直に感じていたんですよね。

 「学習を効率化していかないと、未来の教育に手が届かないんじゃないか?」、そのためには教材自体を変えていかなくてはいけないのではないか、というのがQubena開発のスタート。

その時はまだデジタル教材も普及しておらず、紙の教材でどう一人ひとりに個別最適化して学習を効率化するか、というところから開発をはじめました。

インタビューに答えてくれる長谷川さん


Q.アダプティブラーニング教材開発の経緯は?

――当時は今ほど“個別最適”の概念が注目されていなかったと思いますが、『アダプティブラーニング教材』に取り組もうと思ったのはどうしてでしょう?

 長谷川:
10年前なので、確かにアダプティブラーニングAIも世間に広まっていませんでしたね。

 鶴野:
個別指導で 一人ひとりに合った学び方を行うことはできるけれど、その方法を届けることができる人数には限界がある。 『どうしたら個別のクオリティを集団に届けることができるのか』という課題が明確になっていったんですよね。その解決法として行き着いたのが、アダプティブラーニング教材の原型だったのだと思います。

 鶴野:
世間にまだ広まっていない『アダプティブラーニング教材』が本当に効果的なのかを、実際に確かめる必要がありました。子どもたちのやる気が減らないように、しかも最適な問題を出し続ける取り組みを、まず紙を使って僕と庄平でやってみたんですよね。

――開発当初は、どんな教材だったんですか?

 長谷川:
当時使っていた教材がこちらです。懐かしいな〜(笑)

Qubenaの原型「TreasureBox」

――あ、そうそう、Qubenaじゃなくて「TreasureBox(トレジャーボックス)」という名前だったんですよね!

  長谷川:
そうですね。

 問題を解く上で“これを覚えれば問題の目的は達成”という要点を“トレジャーボックス”と呼んでいて。Qubenaでいう“ヒント”や“解説”です。子どもたち一人ひとりにとっての「宝箱」の意味でファウンダーがつけたんです。

「トレジャーボックス」

 ――素敵なネーミングですね・・・!

長谷川:
アプリの名前も初めは「TreasureBox(トレジャーボックス)」でした。ただ商標の関係で、見直す必要があって。2015年くらいかな、当時のメンバーで社内コンペをして「Qubena」に変えたんです。

 ――「Qubena」は造語ですが、どんな意味があるんですか?

 鶴野:
宝箱の“箱”を言い換えて“キューブ”、数学が盛んなインドの言語で宝箱や箱を意味する語句を意味する“カジャナディバ”、そこに知恵・学芸の女神の“アテナ”。この辺の響きを合わせて「Qubena」になりました。

――なるほど・・・!トレジャーボックスはQubenaの名称にもロゴマークにも生きてるんですね。(しかし、カジャナディバ持ってきた方いろんな意味ですごい・・・。)

ちなみにこんな案もあったそうです

――そして、紙で「アダプティブラーニング」・・・。想像がつかないですが、トレジャーボックスはそれをどのように実現していたんですか?

鶴野:
今のQubenaと原理は同じで、戻り遷移(Qubenaの特徴である、つまずきのポイントへ戻って出題される問題遷移のこと)を作っておいて、間違ったらそのプリントに進むというシステムです。1枚にたくさん問題があるとやる気がなくなってしまうので、サクサク進められるように3問ずつ載せて。

長谷川:
そうそう、戻り遷移はデータのコメントの部分で管理して。3問でも情報量が多すぎるから1ページ1問にしてみよう、など試行錯誤しながらやっていましたね。

Wordファイルのコメント欄に書かれた戻り遷移

――えっ、紙で戻り遷移・・・?!このプリントは、全部で何種類くらい作っていたんですか?

 鶴野:
紙で作っていたときは中1向けに、1000問とか2000問くらいでしたかね。数学から始まって、英語、理科なども用意し、最初は復習場面でのテスト運用だったのですが、だんだん新しい内容を学習する場面でも使ってみようとシフトしていきました。

 鶴野:
庄平(長谷川)が作ってくれたワードのフォーマットに、僕と庄平で実際に数字を入れ替えてたくさん作りましたね。

 ――それは、気が遠くなりそう・・・。当時は何人でこの教材の開発をされていたんですか?

 長谷川:
最初、中学1年生の実証の時は僕と鶴野でやっていました。その後、2年生3年生あたりで限界が・・・。千葉で別の塾をやっていたメンバー2人が加わり、最終的には4人で作っていましたね。

鶴野:
講師として普通の授業を終えた後で教材づくりをしていたので、大変でしたね。2倍働いてるといったら言い過ぎかもしれないですけど(笑)

 長谷川:
このときからただ「アダプティブ」なだけではなく、「ナノステップのアダプティブラーニング(※)」であることにこだわっていたんですが、今までにそんな教材存在しなかったので、すでに市場にある問題では表現できなくて。一つ一つ作問する必要があったのは大変でした。

※一人ひとりの子どもたちの理解度に応じた個別最適な学びを実現するため問題の粒度(学習項目やその難易度の段階性)をスモールステップよりもさらに細かく設定することをCOMPASSでは「ナノステップ」と呼んでいます

 ――前例がないところから教材を生み出すのは本当に大変そうですよね。

インタビューに答えてくれる鶴野さん

Q.紙からデジタルへの移行の経緯は?

 ――そこから紙の教材をデジタルに移行していった経緯を教えていただけますか?

 鶴野:
紙で試してみて、「なんとなくいけそう」という感触を得ることができたところで、本格的にデジタルへの移行を考え始めました。最初はとりあえず僕たちが紙で作ったものをデジタル化するところから始めて。

 長谷川:
『1対30の個別指導』を実現するためには、やはりテクノロジーの力を借りることが必然
だったというか。当時普及しはじめていたタブレットの教材を作ることになっていきました。

Qubenaの前身「TreasureBox」開発当初のプロトタイプ

 鶴野:
当初4人だったところから、メンバーも10人くらいに増えましたね。これまで教材づくりがメインのメンバー構成だったところに、エンジニアやデザイナーを含むいわゆる初期メンバーが集まって、本格的に開発するぞ!と始めたのが2015年の6月ごろですね。

 ――デジタル化を進める中で大変だったことはありますか?

長谷川:
まだタブレットで学習するという概念が世の中に無かった時代なので、そもそもタブレットに適した教材って何だろう?と。問題集をPDFにしてタブレットにはめ込むわけにもいかないので。

 何が正解かわからないまま手探りで問題づくりを進める中、締め切りもあるし、複数学年分作らなければならないし、問題数は1000問単位であるし・・・紙の時代も苦労しましたが、あの時期は、辛かったですね〜(笑)

当時の問題検討時のホワイトボード
目指す教材像を議論する当時のホワイトボード
各問題を解くにあたり子どもたちが参照する「説明」の原型をつくる時の紙芝居素案

鶴野:
確かに大変でしたけど、楽しかった記憶でもありますね。「ナノステップ」であるためにはどうあるべきか、日々ブレストしたり、外部の専門家の方に指導を仰いだり。あの“0→1”のステップがあったからこそ、今のQubenaがあると思っています。

Q.子どもたちが通ってくるオフィスとは?

 ――当時の開発環境について教えてください。

長谷川:
八王子の学習塾COMPASSはそのまま続けながら、開発本格化のタイミングで三軒茶屋に新しくオフィスとそこに併設するかたちでQubenaを使って学ぶ直営塾「Qubenaアカデミー」を開きました。

 長谷川:
アカデミーを開いたのは、実際に使ってくれる子どもたちが近くにいる状態で開発することと、エビデンスを回収することの2つの目的がありました。教材の開発者と子どもたちが同じ空間の中にいるというのは珍しい状態ですよね。

 鶴野:
僕や庄平(長谷川)と違ってエンジニアやデザイナーのメンバーは「子どもたち」についての知識はほぼないところからのスタート。開発したプロダクトに対する子どもたちの実際の反応に、近くで触れられる機会を作りたいと思って、オフィスとアカデミーを併設にしたんです。

 三軒茶屋のときはそれこそ僕たちが開発している2mくらい先に子どもたちが6人くらい集まっているような環境で。そのあとも、子どもたちに通ってもらえる環境はオフィスのコンセプトの一つとして大事にしていました。子どもたちが通えるように大きな3階建ての一軒家を借りていた上大崎のオフィスの時代もありましたね。

上大崎時代のQubenaアカデミーのチラシ

 ――実際に子どもたちとはどんなやりとりをされていたんですか?

 長谷川:
 子どもたちがQubenaを使う中で気付いたことがあると持ってきて「ここがちょっと・・・」と。で、僕らが「そうか、すまんなぁ・・・」と言いながら修正して、それをすぐにまた使ってもらって。

子どもたちは「ここ違うよ」とか「ここ使いにくいんだけど」とか、遠慮なしに指摘してくれる。開発する側としては落ち込むこともありましたけど、そうした子どもたちとのコミュニケーションが今につながる当時の開発を支えてくれていたと思います。

 ――現場の声にとことん向き合って、より良いものを目指していくCOMPASSのものづくりのDNAをお二人のエピソードから感じます。

 長谷川:
様々な職能の人たちの連携の強さも昔から変わらないCOMPASSらしさ
ですよね。デザインやテクノロジーに詳しくない教育畑の僕たちは、デザイナーやエンジニアに話を聞いて教材開発に生かすし、営業メンバーの声から現場のニーズを学ぶことも。逆に僕たちが頼ってもらうこともたくさんある。

自然とお互いに対してリスペクトがあるのは、昔からある文化なのかなと。大事にしたいなと思いますね。

Q.次の10年に向けてCOMPASSで実現したいことは?

――最後に、10周年インタビューということで、これからの10年、COMPASSで実現したいことをお聞かせください。

長谷川:
医療分野などで議論されているように、教育の世界でも、すべての学習者が自分の学習データを自由に利用できて、あらゆるアプリでそのデータを使える、そんな未来が実現されていくと思います。その中で教育業界において先陣を切っていきたいですね。あとは今後のデジタルデバイスの進化に応じて、またより良い学習体験について考えるときが来るはずなのでそれも楽しみですね。

 鶴野:
うーん、落ち着いて考えたことなかったですが、「今よりももっとユーザの学習体験が良くなるモノづくり」には引き続き向き合っていきたいですね。

 特に寄与したいのは遷移や分散学習などの部分で、たくさんの教材が存在する中で、QubenaをICT教材のスタンダードといえるプロダクトにしていきたいです。データを活用したコンテンツのブラッシュアップや、5教科にとらわれない「学び」そのもののアップデートもしていきたいと思っています。

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鶴野さん、長谷川さん、ありがとうございました!Qubena、そしてCOMPASSの原点を知ることができて、皆さんが10年間大事に育ててくれたものを、これからの10年でもっと進化させていくんだ!という決意が深まりました。

皆さん、次回のインタビューも楽しみにしていてくださいね!

COMPASSでは次の10年を一緒に作っていく新しい仲間を様々な職種で募集中です。興味を持ってくださった方のご応募お待ちしています。