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EBPMで学びをデザインするCOMPASSの教育R&Dチームの社会的役割とは【メンバーインタビュー#18】

こんにちは、採用広報の五ノ井です。前回のインタビューでは、昨年9月に新しく”学習eポータル”の機能を追加してサービス開始した、学習eポータル+AI教材「Qubena」のサービスの全容についてお届けしました。

今回は、Qubenaが持つ膨大な学習データを基に学習効果の検証を行ったり、新しい学びをデザインし実際のフィールドでその評価を行うなどの研究をしているCOMPASSの教育R&Dチームにインタビューをしたいと思います!
今回インタビューを受けてくださるのは・・・

木川 俊哉(きがわ しゅんや)/写真左
取締役/教育R&D 室長/最高教育体験責任者。前職にて塾の経営に携わる中で「全ての子どもたちが可能性を広げられる教育」に想いを持ち、ファウンダーの誘いでQubena開発期のCOMPASSへ。多くの教材の開発のほか、直営塾の運営などにも携わる。趣味はサーフィン。木川さんのnoteアカウントはこちら→ https://note.com/shunyakigawa

中嶋 瑞希(なかじま みずき)/写真右
 教育R&D所属。前職では塾を経営する会社にてeポートフォリオの普及に従事。より「日本の教育」への影響力が大きいCOMPASSに出会い、2022年7月に中途採用で入社。現在、実証研究や効果検証を担当。

Q.教育R&Dチームの役割・ミッションは?

 ーー早速ですが、教育R&Dチームのミッションについて教えていただけますか? 
中嶋:
教育R&Dチームのミッションは、中長期的な視点でQubenaの価値を成長させていくために、実証研究や効果検証を行っていくことです。
 
ーー中長期的な視点というと?
 
木川:
プロダクト開発では普段、ユーザーの声から目の前のプロダクトの抱える課題の解決を常日頃行っているので、短期的な視点にフォーカスしやすいんです。ただ、やっぱり中長期的な視点でエビデンスを元に「どういうサービスがあると良いのか」を見据えながらQubenaというプロダクトを開発していくべきなので、そのためにR&Dチームで実証研究・効果検証をしています。

Q.教育R&Dチームの仕事内容は?

ーー実際にはどんなことをやられているのでしょうか?
 
中嶋:
R&Dの業務の内容としては、大きく以下の3つに分かれています。

1、基礎研究
2、応用研究
3、研究で得られた知見やノウハウの展開

ーーそれぞれ具体的に教えていただけますか?

1、「基礎研究」について

ーーまずは1つ目の基礎研究について

基礎研究:
学び全体をデザインする
ような研究です。
すでにある教育の理論や先行研究、先行事例などを元に、Qubenaを使った効果的な学びのデザインを考えます。そしてそれをフィールドで実際に実践して、そこで得られたデータを分析し、その結果の良し悪しを評価していきます。

中嶋:
その評価をフィードバックしながら、学びのデザインを作り上げ、プロダクトに反映していきます。
 
――「学び全体をデザインする」というと?
 
中嶋:
「学び全体をデザインする」ことは、COMPASSが掲げているミッションである「新しい学びの環境を創り出す」ために必要だと考えています。
単にQubenaというツールがあれば「個別最適な学び」ができるようになるわけではなく、学び全体がデザインされた上にQubenaがあることで、新しい学びの環境を作り出していけるんです。子どもたち・先生・保護者・環境・他のツールなど、全てを含めて研究・モデリング・デザインする必要があります。

COMPASSのミッション・ビジョン

――なるほど、ミッションである「新しい学びの環境を創り出す」には、Qubenaだけでなく、学びの環境そのものに切り込む必要があるということですね。
 
中嶋:
さらに、「学び全体」には授業だけではなく、評価のデザインも含まれます。学びの促進には、正しい評価方法も必要ですので、Qubenaを使うことで先生方も子どもたち自身も適切に評価ができるような「評価モデル」を開発しています。
 
評価モデルの開発の例としては、Qubenaの問題と学習指導要領コードを紐付けることで、Qubenaの学習データから学習指導要領に沿った評価ができる方法を検証したりしています。この評価モデルができると、先生方の評価業務の負担もすごく軽くなると思います。
 
ーー確かに言われて見れば、授業が新しく変われば、評価方法も変わりますもんね。授業デザインや評価モデルの実証研究などは、どのように行っているのでしょうか?

インタビューに答える中嶋さん

中嶋:
新しい取り組みに協力いただける学校と一緒に進めています。 現在は2つのフィールドがあり、私もその学校に毎週足を運んでいます!
例えば、九州にある学校では、Qubenaを使い自由進度学習を行う授業モデルを検証しています。単元や学期のまとまった期間の中で、Qubenaを使って生徒一人ひとりのペースで学習をする方法です。
自由進度学習を取り入れると、
・「期間内に生徒全員が履修する単元を全て終わらせられるのか?」
・「評価はどうするのか?」
といった課題が出てきますよね。この課題を解消するために
・「生徒自身が学習計画を立てる活動を入れる」
・「評価の基準を作って事前に生徒に公開した方が良い」
・「生徒が学習の振り返りを提出して、先生がチェック・フィードバックをする」
などの改善提案をしながら新しい授業デザインの実践と検証を進めています。
 
ーー実際の学校現場で新しい授業デザインを実践して、出てきた課題も改善しながら学び全体をデザインしているんですね!

2、応用研究について 

ーー次に2つ目の応用研究について教えてください。

応用研究:
基礎研究とは反対に、すでにQubenaを導入して利用している自治体や学校で、どのような効果・影響があったのかを効果検証しています

中嶋:
単に分析を行うだけではなく、Qubenaをすでに導入していたり今後利用予定の自治体・学校が抱える課題のヒアリングを通して、Qubenaにどんな効果を期待しているのか、Qubenaがどのような効果がもたらせたら良いかというところから考えています。

そしてその効果を検証するために、どのデータを使ってどう分析するかを考え、自治体や学校への提案も行っています。

ーーQubenaの効果についてはすでに検証は行われているのですか?

中嶋:
はい。現在いくつかの自治体と協力して効果検証は進めておりまして、教育経済学を専門とする中室牧子先生の所属する、慶應義塾大学総合政策学部の中室研究室とともに検証に取り組んでいます。先日プレスリリースでも発表しましたね。

▼ 慶応義塾大学SFC研究所 中室研究室との研究について(プレスリリース)

ーーこれは必見ですね!Qubenaの導入効果については以前からお問合せが多くきていたので楽しみです!!

中嶋:
研究結果は、自治体や先生方に向けた対外向けイベントである「Qubena-Action(キュビナクション)」などでも発表できたらと考えています。

年に数回オンラインで開催しているQubenaAction。ゲストによるトークセッションも

過去にも中室研究室とは効果検証を実施していて、Qubenaを利用したクラスが利用しなかったクラスと比較して、学力テストのスコアが統計的に有意に高い結果となり、数学の学力向上が見られたという結果もでています。

慶應義塾大学中室研究室とQubenaの活用による学力への効果検証について(プレスリリース)


3、研究で得られた知見やノウハウの展開について

ーー最後に、「研究で得られた知見やノウハウの展開」こちらはどうでしょうか。

研究で得られた知見やノウハウの展開:
基礎研究と応用研究を元に得られた知見やノウハウを発信する業務です。 
社内で情報を共有するだけでなく、「Qubena-Action」をはじめとする対外向けのイベントやセミナーでの発表、学術論文や教育専門誌などで利用者のみなさんや教育業界にお伝えしたりします。

ーー学術論文を書ける材料があるということなんですね!
 
中嶋:
実は、いくらでも書けるなと思うくらいにはめちゃくちゃたくさんあります!(笑)
ある学校の夏期講習での実践データでも「子どもたちの主体性が上がった」「計画を立てるようになった」「自己調整の考え方や意識が高まった」などの結果が出たので、それだけでも論文に書ける内容だなと思っています。
 
あとは、個人情報の問題などをクリアにできれば、発表できますね。
 
木川:
そうなんですよね、公教育の研究は結構ハードルも多くて。例えば公教育におけるABテストなどは基本的にはNGとされているんです。あえて差をつけることは不平等とされるためです。
たまたまQubenaの活用率など差が出ているところを利用することで、そのデータを取っているのですが、そのたまたまのポイントを探すのが大変で、プラス個人情報保護のハードルもありますので、良いところまで漕ぎつけても、なかなか公開までできないことも少なくありません。でも、それを一つ一つ乗り越えていくしかないんですよね。

インタビューに答える俊哉さん

ーー実際に効果が出ていても、超えるべき色々な壁がたくさんあるのですね。でも、研究の結果が発表されるのをとても楽しみにしています。

Q.教育R&Dの意義とは?

ーー教育R&Dの意義や、COMPASSや教育業界にとって教育R&Dが必要な理由についてお話しいただけますか?
 
中嶋:
理論と実践の橋渡しをすることが、R&Dの意義だと思っています。
基礎研究は教育<理論>とQubenaの開発(COMPASS)との橋渡しを、応用研究は教育<現場>とQubenaの開発(COMPASS)との橋渡しですね。

 理論と実践の間でかなり乖離があるのが、教育業界の大きな課題だと感じています。それをデータ分析や研究などのエビデンスに基づいて架け橋になり得るのが教育R&Dなのかなと。
 
ーー昨今では、EBPM(エビデンスに基づいた教育政策)の必要性もよく話題に上がりますがまさにそれですよね。
 
中嶋:
そうですね!とはいえ、学校現場だと、理論ばかりを優先できないことも多いですよね・・・かといって、現場の意見を聞きすぎると本来良いとされている教育のあり方が実現できないこともあるので。
現場の意見も取り入れつつエビデンスを持ってその仲介をしていく役割だと思っています。
ーーなかなかバランスが難しそうですが腕の見せ所でもありますね。

Q.仕事のやりがいは?

ーー教育R&Dのお仕事をする中で、中嶋さんが感じるやりがいはどんなところにありますか?
 
中嶋:
研究に協力してくださっている学校の先生方に「Qubenaを使って子どもたちにこうなってほしい!」って、すっごく熱い思いを持っている方々がいらっしゃるんですね。そういう先生方に根拠を持って「こういう結果が出ていますよ」と伝えて、よりよい使い方やよりよい教育に向かうお手伝いができることが、やりがいだなと感じます。
 
研究では、良い結果ばかりが出るわけではないので、もちろんネガティブな結果になる場合もありますが、それもまたデータを元に説明できたりもするので、エビデンスに基づいた改善策が議論できるのもすごく魅力です。
 
先生方のバックボーンや経験と合わせて、実際のデータを元に考えることができる、議論の材料を作れることはすごくやりがいだと感じています。

ーーQubenaやCOMPASSに期待してくださっている先生方もたくさんいらっしゃるのですね!
 
中嶋:
実際にあった嬉しい話があって。Qubenaを使うまでそこまで成績が良くなかったけれど、とても真面目な生徒さんがいらっしゃったんですね。その生徒さんは、Qubenaを使い始めた単元からすごく成績が伸びたんです! その時の点数自体は平均点くらいだったので、先生からすると、「あ、前よりできるようになったね!」くらいの印象だったようで。でも、しっかり分析していくと学年で一番伸び率が高く、Qubenaをたくさん使ってくれていたんです。
 
先生からも「真面目だと知っていたし、頑張っているのはわかっていたけど、そこまでだとは思わなかった」という感想をいただきました。努力した結果がこれだけ反映されたということを、数値を持ってお示しできることで、その子の良さが光って見える。その子にも実際に伝えると、すごく驚いていて、でもとっても嬉しそうで。そういった瞬間に、やっててよかったなって思いました。
 
ーー今まで注目されなかったデータが可視化されることで、見えなかった良い部分が見えるようになるのは、先生にとっても子どもたちにとっても嬉しいことですよね。
 
中嶋:
研究によってしっかりとしたエビデンスが揃えば、従来の教育で指導なさってきた先生方も、新しい授業や評価モデルに納得してスムーズに移行できると思うんです。先生自身もより良い教育へとバージョンアップできて、業務負担も自然と減っていくと思います。その分、本当に必要な、子どもたちと向き合う時間を割けるようになってくるはずです。子どもたちも先生も、みんなが幸せな教育のあり方を実現していきたいですね。
 
ーー日々の地道な作業も、子どもも先生も幸せな教育のあり方を実現するためだと思うと、より一層やりがいを感じることができますね!

Q.教育R&Dチームの今後の展望は?

ーー今後、教育R&Dチームをこんなチームにしていきたい!など、何か構想はありますか?

木川: 
教育R&Dとしては、現在多くのフィールドで研究をしているので、その研究結果を一つひとつ確かめながら良いプロダクトに繋げていきたいなと思っています。「何が求められているのか」「何を作れば学びがもっと良くなるのか」をエビデンスに基づきながら決定していく。そんな役割だと思うんです。
教育は国の土台にもなる部分なので、とてつもなく大きな意義があります。僕らはテクノロジーを使って教育をアップデートしていきたいと思っています。日本の教育を変えていくんだという情熱を持ちつつ、エビデンスに基づきながら冷静に判断できるチームでありたいと思っています。
 
――冷静でありながら情熱的・・・!かっこいいですね。COMPASSの研究によって、教育業界が変わっていくのを見るのが楽しみです!


俊哉さん、中嶋さん、ありがとうございました!

COMPASSでは、現在さまざまな職種で新しい仲間を募集しています。興味を持っていただけた方のご応募をお待ちしています。




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